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市街地再開発

 先日、ある無料セミナーに出かけて、「身の丈再開発」なる手法があると知った。再開発といえば森ビルのアークヒルズに始まる、中小の地権者を取りまとめて巨大ビル群を誕生させる事業を想定するのが普通だったが、都心から少し距離のある立地で、維持管理や建て替えも容易な手頃な大きさの建物を、地権者の事情に応じた形で造った実績の紹介があり、今後の人口減少社会での再開発の一つの方向ではないかとのことだった。市街地再開発事業は公共性・緊急性が高く、施行者が公共機関に限られる第二種(用地買収方式)と、組合や民間も施行が可能な第一種(権利変換方式)があるが、多くの地権者が再開発組合を結成する第一種が一般的だ。再開発ビルを完成させるまでには多大な時間を要するのが普通で、アークヒルズは15年かかったと聞いたし、私が在籍した民間企業で関わった再開発でも同様の年月を経てから、竣工を知るところとなった。セミナーでの話は都市再生機構の経験だったが、赤羽駅西口地区市街地再開発は地権者300人で40年だが、霞が関R7プロジェクトは地権者3人で、借家人を含めても16人だったので、着工まで3年、工事に3年という短期完成もあるとのことだった。

 地権者の合意形成には再開発後にどうなるかの設計図が重要である。時間をかけて再開発するからには、建物がきれいになるだけではなく、資産としても有利になるような「開発利益」がなくては話が進まない。一般的には商業地なのに木造家屋が多く、容積率が余っているような地区で高層化が図れる場合が再開発適地となるが、合意を容易にするために容積率を割り増しする高度利用地区をかけて、権利変換のための保留床を増やさないことには、再開発の成立は難しくなる。高層ビルは近代化や都会性の象徴のような役割をもって、再開発後の設計図に描きやすいことは確かだ。しかし成熟社会の未来図は、高さを競う高度成長期と異なる価値観も生まれてきていて、省エネルギーやエコロジー、再生可能などの頃合いの良さを求める方向もあるようだ。

 身の丈再開発は可能な指定容積率を余す開発を意味するとのことで、超高層ビルの割高な建設費、設計上の制約、建設期間の長さを三重苦と考えて、一体よりは個別の自由度が高い計画で再開発するもののようだ。2001年にパリを訪れた際、1991年の在住当時にセーヌ川沿岸を調査して知るところとなった、北西部隣接市に位置する中州のジャット島の再開発その後を見に行った。フランスの再開発は土地占有計画POSから白地に抜いて、協議整備区域ZACとする手法で行い、規模が大きい印象が強かったが、ジャット島の再開発は2市にまたがるものの、低層の計画で、建設後新しい建物は計画地から外してあって、その柔軟性に驚いたものだった。印象派絵画にも描かれた島なので、荒れ果てた感じの工場や家屋を取り壊して、歩道や水辺の休息地を整備することでそのイメージを回復し、2つの市で低層連棟式建物と戸建建物と異なっており、一部公園の整備が遅れていたが、全体的にはすっかり小ぎれいな街並みが出来上がっていた。市役所のホールに計画図面や再開発後のパースなどの展示がされていた、91年の段階から10年後のことだった。

 私は現在居住する区で、都市計画審議会の公募委員をしているが、来月開催予定の審議会の議題は駅前再開発だという。反対する市民団体の方が説明に来たいとの電話をもらい、一通りの予習をして、現地を一回りしてきた。反対の理由は区のHPでの記載内容では十分に分からないので、話を聞いてみるしかない。組合施行のようだが、中心になる企業も公表された文書には見当たらないけれど、市民団体の方はご存知だろう。現地を見るまでは、建物の高さにこだわって風害の心配をするのも、他に例のない高さならともかくとして、という感じでいたのだが、すでに10階建て前後のビルが相当建っている現地を見て、思い出したのが「身の丈再開発」やパリ周辺市の低層開発だった。駅前といっても地下鉄駅なので、駅前広場などを造る再開発ではない。計画上は業務ビルなのか、マンションを別棟にするのか、数棟建つようだが、その内容は区役所の縦覧図書にはなかった。都市計画決定は高度利用の限度を定めることを求められているだけのようだ。

 区画道路を1本挟んだ2区画の再開発街区はこれまでの区内で例のない広さであり、それなりに活気もある現状が再開発の準備や工事で10年も寂れた状況になるだろうことも、都市計画決定に賛成するか迷うところだ。業務ビルはワンフロアの面積が広い方が優良とされて、一部上場など有名企業の入居が望めるのが一般だが、今後の経済状況によってオフィスの需給予測は難しいだろう。大学が多い区ではあり、オフィス需要はそれなりにあるだろうが、超高層ビル1棟が付近の業務化や再開発の呼び水になる地域ではない。商業についても、近くにすでに完了した高級スーパーの入る住宅棟の再開発があり、地下街に商店を整備するとしても、それほど高級化路線はとれないだろうが、昔ながらの生鮮食品の店は成り立ちにくいだろうことを考えると、残念な気がしてしまう。そうかといって再開発そのものを否定するつもりではない。工期を分けるとか、容積率を目一杯は使わないで、新し目の建物は残すなど、きめ細かな計画の検討を再考したいところだ。現在の計画を十分に理解した上でのことだが。

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